ほんの少し意識を閉じる。
 思考が能を支配して行くのを感じる。
 目に見えるもの耳に聞こえるもの皮膚に触れるもの、
 全てが己の分析と理解の範疇にある様な錯覚を覚える。
 従え。
 若し此れが見た目通り魔法か何かだったとしたら、
 恐らく必要な呪文は其れだけだ。
 呼吸をする。
 空気を、其の中にある酸素をイメージする。
 指を擦り、発火布から生じる火花を、
 其の成長と軌跡と結果とをイメージする。
 其処には一欠けらの不信も無い。
 此の身は自然界の道理と共にのみ存在する。
 疑う余地など何処にも無い。
 次から次へと脳が式を組み立てる。
 己が外界から切り離されて行く感覚。
 其れ所か、躯から脳が、もしかしたら脳すらも置いて思考が。
 其れはまるで快楽の様に知覚された。
(性的快楽とどちらが快いかと言われたら即答を躊躇する位に、其の快楽は絶大だ)
 焔が舞う。
 一ミリの誤差も無い焔に、無意識に口の端が持ち上がる。